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  DYNACO V

オーナーから DYNACO Vの調子が悪く左右アンバランスで雑音が大きい。
何とか修理して調子を取り戻して欲しいと依頼がありました。


DYNACO V修理前の状態です。モノラルアンプなので2台セットです。
ほぼ同じような外観だったので、もう1台の写真は省略します。




修理前のPCBユニットです。真空管は6AN8、
カップリングコンデンサはBLACK CAT、
抵抗はA&Bソリッドです。老朽化で使用不能でしょう‥
早速、簡単に性能確認すると、不調を通り越して故障に近い状態です。
両チャンネルとも、残留雑音が2mV以上だし、出力も30W前後しか出ません。かなり重症でした。
次に内部を見るとLch側はチョークコイルから含侵液が溶けだして内部を汚してます。
これは酷使されたか、知識不足の輩に内部を弄られたのでしょう、可哀そうに‥。
よし、必ず復活させるから!
方針は決まりました、老朽部品を交換し調整して初期性能を取り戻します。
専用部品はUSAのDYNAKIT社に、部品を注文しました。
内容は、@ブロックケミコン、Aチョークトランス、Bフィルムコンデンサ、Cビス類を1式
なんでビスが?と思うでしょうが、欠品してるインチサイズのビスは国内では入手が難しいからです。
ソリッド抵抗は全廃して金属皮膜抵抗と酸化被膜抵抗に交換します。
内部配線も全てやり直して信頼性を上げます。もちろんPCBユニット内も同様です。
またBLACK CATは、老朽化すると絶縁低下を起こすので交換必須です。
ただしオーナーの希望で真空管と、なぜかソケットは変えないで欲しいそうです。
仕方ないのでソケットの端子を磨いて再使用しましょう。
  USAより部品が到着!
 およそ1か月で部品が届きました。支払するのに手間と時間がかかった為です。
 部品運送は5日間なのに!クレジットカードもペイパルもダメ!
 国際為替を使った為です。
 でも純正部品に拘りましょう。さすがにBLACK CATは無くて現在は同じメーカー
 (コーネルデュブラー社)の最新フィルムタイプが純正だそうです。
 ブロックケミコンとチョークは在庫がありました。
 総額は、UPS国際宅急便送料込みでUSD168.0-でした。
まず、PCBユニットから部品交換を始めました。
カップリングコンデンサ、抵抗を交換します。
位相補正コンデンサは元気なので継続使用です。
半田付けを全部やり直して、奇麗に清掃しました。
でも黒いコンデンサが白くなって模様替えが
はっきり解りますね。
なおソリッド抵抗は抵抗値の狂い、BLACK CATは
劣化して絶縁低下してました。


 シャーシ内部も部品交換と再配線を行います。
 それにしても誰が最初に半田付けしたのかしら?芋付け箇所も1個2個ではありませんでした。
 何十年も前にUSAで誰かがキットを組んだのでしょう。そう思えば仕方ないですね。
 誰が、いい加減な修理を行ったのでしょう?困った人です!
 それにしても、この状態で商品として販売する店の態度には腹立ちますね。
 ブロックコンデンサとチョークコイルを交換、配線もしっかりからげて一安心です。


 部品交換が完了しました。
 この後は、初段真空管選別と出力菅のペア組合わせの検討を行います。

 雑音は主に初段菅性能によるので低雑音の個体を選びます。
 資料を見ると初期の製品は6AN8ではなく7199という雑音管理された
 特別仕様を使ってたようですが入手出来なくなったのでしょうね。
 私の在庫品30本から良い順に2本をDYNACO勤務に任命しました。
 元から働いていた6AN8はエミ減とノイズで長年のご奉仕ご苦労様でした。
 次に、オーナーが持参した6550A予備球4本と装着されてた4本の
 6550A合計8本から合わせて2ペアを決めましょう。
 KT-88も2本あるので一緒に見ましょうか。
 

 残念ですが8本では2ペア取れませんでした。
 なんとか使えそうな組合せにしましたが
 Rch用はかなり良くなりましたが、Lchはペア性が不充分です。
 そしてKT-88は使えませんでした。
 仕方ないので、この組み合わせで暫定として性能を見ます。
 






 歪率特性は、Lchの出力菅ペア選別が不十分なのでRchよりも悪くなりました。
 しかし単体で見れば決して悪くない性能です。
 出力菅を交換して本来の性能を発揮させてあげたいところです。
 Rchでは400HzHPFを入れて測定すると1kHzでは0.01%を切る所まで下がります。
 100Hz測定では400HzHPFをOFFにするので、実力が出て低レベルでは歪率が下がりません。
 残留雑音が1mV程度ではこんなものです。
 また10kHz歪率が悪化するのは強い位相補正の弊害でパランスが崩れる為と、
 負帰還量が減少するダブルパンチによります。
 組立キットでは、誰が作っても発振せぬように過剰補償の必要があるのでしょう。
 最大出力は、両チャンネルとも50W出るようになり出力帯域幅も回復しました。
 周波数特性は6Hz〜60kHzがフラットで7Hzぐらいに小さなピークが出てますが問題はありません。
 最後に、この個体に限らずDYNACOVの一般的傾向で、
 電源トランスが唸るのでコア締め付けナットを増し締めしておきましょう。
 修理完了と試聴
 部品調達に時間を取られ修理期間が延びてしまいました。
 修理完了の翌日、オーナー宅に設置して試聴確認を行いました。
 カートリッジ オルトフォンMC20、プリアンプ Macintosh C20、
 スピーカーはタンノイ バークレイです。
 順調に歌い始めました!よしよし、良かったね。
 オーナーも御機嫌です。それまではMacintosh MC240だったのですが、
 DYNACOVはクラシックに合うとのコメントで、ジャンルにより
 パワーアンプを使い分けて楽しむそうです。
 

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