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  P&C LCイコライザアンプ修理

「P&C LCイコライザアンプの右チャンネルから音が出ないので見てほしい。」
と電話が入りました。
はい、お任せください。必ず修理して生き返らせますよ。



 このイコライザーアンプは、2台一組です。
 写真左側がイコライザーアンプ本体で、右側がラインアンプです。
 またLCイコライザーユニットは入力・出力とも600Ω仕様です。
 そして本体とラインアンプの間に600Ω可変アッテネーターが入って
 音量調整を行うシステムです。
早速、御訪問して症状確認しました。
確かに片チャンネルから音が出ませんね。
信号に沿って順にチェックすると
ラインアンプ前まで信号は正常でした。
そこでラインアンプ内部を開けて、
数箇所の芋半田を見つけました。
修正後は両chとも正常になりました。
 さあ、試聴しましょう。
 スムーズで良い音ですね!でも‥
  ・ハム雑音が気になります。
  ・低音が少し寂しく、高音が出過ぎている様に思えます。
 オーナーにコメントすると
  「これはシステム全体の個性と思っていますが、違いますか?」
 いいえ、ハムが大きいのはイコライザアンプの性能不足ですよ。
 その証拠にATTを絞るとハムも減るでしょう?
  「なるほど、解りました。高低のバランスは?」
 はい、多分イコライザーアンプのRIAA偏差が大きいと思います。
 調整・修理には設備が必要なので、お預かりして修理させてください。
 という経過で工房に持ち帰り修理となりました。
   修理開始 
回路図作成と点検
 まず回路図を現物から起こします。
 MCカートリッジ専用なので入力端子から昇圧トランスに入ります。
 次に5692+1626の2段アンプを通ってLCイコライザユニットに信号を送ります。
 5962は100kΩの抵抗負荷、1626はトランス負荷でトランスには直流を流してます。
 両真空管はシングル増幅のCR結合で負帰還はありません。
 出力管シングルのパワーアンプと同じですね。
 別シャーシの電源は、整流菅WE274Aにて両波整流し、
 2段LCフィルターにてリップルを取り300Vを供給しています。
 全ての真空管は直流点火です。アンプシャーシ側でブリッジ整流してます。
 電源を入れて各部電圧を測定して回路図に記載します。
 電圧配分は適切ですし、シンプルな回路で何処にも無理はありません。
 ただヒーター電圧が少々不足ですが、これは後ほど検証します。
 次に、抵抗とコンデンサを実測します。
 A&Bソリッド抵抗は、全て表示値よりも抵抗値が上昇していますが
 極端な変化/劣化はありません。
 ケミコン類は、ほぼ表示どうりの容量です。
 結合コンデンサは容量値/絶縁抵抗とも問題無し。
 これで回路図が出来上がり、第一弾の点検が終わりました。
修理1 雑音低減
最初にハム雑音をやっつけましょう!
出力端子でのハム雑音を測定しました。
Lch:0.9mV、Rch:1.9mV
こりゃ大きいわ!

まず電源からのハムを確認します。
+300Vにはハムはありません、よろしい。
ヒーター回路には約150mVのリップルが乗っています。
そこで外部直流電源にてヒーター点火すると雑音が半分程度になりました。
なるほど他にも不具合が隠れている訳ですね。

対処内容
@電源接続端子からヒーター整流ダイオードまでの配線変更。
A整流後の5962までのヒーター配線経路を変更。
B入力トランス2次側から5962グリッドまでの配線経路変更。
C出力トランス2次側からLCイコライザユニットまでのアース配線変更。

この対処にて出力端子の残留雑音は両チャンネルとも0.2mVになりました。

修理 RIAA偏差修正
実用上での雑音が無くなったので、次にRIAA偏差修正です。
先ず偏差を測定しました。
高域ではプラス偏差、低域はマイナス偏差ですね。試聴感想どうりでした。
Lch/Rchとも同じ傾向なので老朽や劣化ではなく最初からのようです。
対処内容
@LCイコライザユニットは正確で、偏差は±0.3dB以内です。
A高域上昇は、入力トランスによる高域上昇でした。
B低域下降は、5962と1626のCR結合の時定数設定不良です。

入力トランス2次側終端抵抗調整と、結合コンデンサ増量にて偏差修正します。
これでRIAA偏差は50Hz〜15kHz間で±1dBに収まりました。
   性能測定 


   修理完了と試聴
 今回も特急要請で大急ぎで修理しました。
 部品交換も幸いにもコンデンサ2点と抵抗2点の交換で済み、
 何とか在庫部品で賄えました。
 修理完了の翌日、オーナー宅に設置して試聴確認です。
 ターンテーブルはEMT、カートリッジ オルトフォンSPU-G、
 パワーアンプは50シングル、スピーカーはオイロダインです。
 システムに設置して電源ON、ハムノイズはありません。
 試聴開始、弦楽四重奏やピアノアンサンブルなどで開始、
 ところがオペラになるとボリュームがどんどん上がります。
 「耳を刺すキツサが無くなり低音も良く出るから心地良い」。
  オーナーも御機嫌です。
 喜んで貰って気分良く帰途に着きました。
 

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