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  Marantz 10Bの修理

「長らく休んでいたFMチューナー Marantz 10Bを整備して性能を確認して欲しい。」
と電話が入りました。
はい、判りました御任せ下さい。十分に整備して復活させます。




オーナー宅を訪問してMarantz10Bを
受け取りました。
ウッドケースに入った立派な外観、
資料によれば1964年発売ですから
50歳以上ですね!
私の年とあまり変わらない?
十分に整備しましょう。
 工房に持ち帰って最初に実施したのは清掃です。
 埃があちらこちらに積もってましたから‥。
 
 スライダックにて電圧を0Vから徐々に上げて電源を供給します。
 定格電圧のAC117Vまで異常は出ませんでした。
 次に一度電源OFFして、117V供給で電源ON、問題無く立上がりました。
 先ずは第一段階はOKです。
 
 では性能確認を始めます。
 受信周波数確認、感度確認、出力電圧、歪率、S/N比、忠実度、
 そしてステレオセパレーションです。
 もちろん各種の妨害雑音除去能力も確認必要ですが
 基本性能確認が先です。
 
 結果、とりあえずFM受信は出来ますがHiFiチューナーとしては落第です。
 オーディオ的には、周波数特性が悪いのでディエンファシスが狂っているのでしょう。
 L/R出力もアンバランスですし、歪率が高く2%もあります。
 受信性能では、帯域内の受信感度差が大きくS/N比も60dBでは不足です。
 ステレオセパレーションは、L→R / R→Lとも17〜18dBです。
 よし、むらむらとやる気が起こってきたぞ!
 
ウッドケース、底板を外して内部確認を始めました。
上面は真ん中に小型ブラウン管が鎮座して測定器のようです。
そして裏側は‥
コンデンサが液漏れしてます!最初に電源の修理ですね。
それにしても立派なフロントエンド部とIF回路で通信機型受信機のようです。
バランスドミキサーに、IF部は9段増幅です!
しかもIFフィルターは、バタワース型LCフィルター。
中央部はブラウン管表示回路です。
ステレオマルチプレックスはマトリクス方式でなくてスイッチング方式です。
38kHz及び19kHzはQが高そうなコイルを使ったLCフィルターです。
これは調整しだいで高性能になりますね。
修理1 電源修理
 液漏れブロックコンデンサを
 交換します。炭化までしてる!
 旧式ツイストロックなので大変です。
 周辺の部品も交換です。
 2次被害を受けてますから。

修理2 ディエンファシス補正
 日本では50μSにしなくては駄目です。
 US仕様では75μSなので定数変更。
 前任者がコンデンサを変えてましたが、
 抵抗値調整を忘れていたので
 周波数特性が狂っています。
 抵抗/コンデンサとも変更します。

修理3 出力端子交換
 RCAジャックが接触不良です。
 センターピンのバネが
 緩んでいて接触しません。
 50年も頑張ったのでご苦労様です。
 カップリングコンデンサも
 絶縁低下してたので交換します。

修理4 老朽真空管交換
使用されている真空管は全部で21本です。
番号を振ってから取り外し
エミッションチェックします。
明らかなエミ減が2本、
怪しいのが2本見つかりました。
でも直ぐに交換ではなくて、
再度実装して動作電圧を確認します。
やっぱり適正電圧から外れてました。
最終的に5本交換します。
一部US製が入手出来ずフランス製です。

もちろん忘れずに真空管ソケット端子と
真空管のピンも綺麗にします。

  調整
一通り修理が終了したので、各部分の調整を行います。
@検波コイルとIF回路
Aステレオマルチプレックス回路
Bフロントエンド、アンテナ入力部





  測定
 調整後に性能測定しました。
 沢山の項目で煩雑なので代表的な測定結果をご覧ください。






測定内容で、気になるのはバンド内の感度差が大きい事です。
本来はUSバンドで最良になるように設計されているチューナーを、
無理やり日本バンドに変えたので仕方有りません。
まあ通信機ではなく感度ぎりぎりで使わないので善しとします。
そして選択度が最新機器と比較すると劣ります。
日本では放送局が犇いてなく、まばらなので問題無いでしょう。
でも現代のUSA状況では厳しいでしょうね。50年前とは全然違います。
逆にHiFiチューナーの音質上では良い方向です。
水晶やセラミックフィルター、最近ではデジタルフィルターの音質は?ですからね。
おまけで、ダイヤルパネルに日本バンドを表示する周波数マークを貼り付けました。
本来はガラスパネル内側に表示したかったのですけどガラス印刷が脆くて
触れるだけで消えてしまう状況なんです。怖くて手をつけられません。
なお我が家での電波状況は御覧のとうりです‥。



   修理完了
 調整後、2日間エージングをかねて連続通電して放送を聞きました。
 良い音です!でも放送局間の音質差がよーく解ります。
 民放各局は駄目ですね。コンプレッサーやリミッターを掛けているので
 HiFiには、かなり遠い‥。
 私は回し者ではありませんが、NHKが音質最良でした。
 30年前のエアチェック全盛期が懐かしいです。
 

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