ヤマナカ技研 寝屋川の真空管アンプ専門店



トップページ サービス内容・料金 問い合わせ 修理・再生の実績 プロフィール

 

  audio reserch D-250 1台目



audio reserch D-250故障で両チャンネルとも音が出ないので見てほしいと連絡が入りました。
オーナー宅にお邪魔して状況を確認するとD-250が2台ありました。
片チャンネルずつをL/R各々に使っているそうです。
大きい!でっかい!!資料では1台65kgありますから‥。
そしてリアパネルには消費電力2kW!って書いてあります。
重いので、動かすのも、ひっくり返すのも出来ません。
そこで家具移動用の台車に載せました。
発振器とデジタルマルチメーター、負荷抵抗を持参して良かった。
動作確認を始めました。電源ランプが点灯し煙も出ませんが、2台とも出力が出ません。
真空管ヒーターも全部正常に点火しています。
「申し訳ないですが持帰らなければなりません。適切な道具と測定設備が必要です。」
ところが私の車では運べないし、仮に持帰っても修理部屋まで一人では運べません。
相談の結果、運送屋さんに搬送を依頼しました。

数日後、D-250が2台届きました。
やっぱり運送屋さんも2人一組で運んでました。



   修理その1 
 最初に電源ラインを準備します。壁コンセントから電源を取るとブレーカーが落ちます。
 電気ストーブやエアコンと同じ大食らいですから。
  はい、準備完了
 それでは最初に修理前状況を確認するためにD-250の電源スイッチをON、
 「あれ?電源が入らない。」D-250のラインヒューズが切れたのでした‥。
 切れたヒューズを見ると低損失オーディオ用10Aでした。
 これじゃあだめ、指定は遅延型15Aですから。
 規定ヒューズを入れて再度ON、電源ランプは点灯しました。
 入力端子ショートで、無信号での出力端子電圧を測定すると、
 <ch1:11mV / ch2:0.7mV> ! ? 全然駄目!
 でもヒーターは全部点灯してるし欠品もありません。
 重症みたいです‥カバーを外して内部点検しましょう。


 内部は壮観です。6550がチャンネルあたり8本の4パラレル出力段、
 電源にも4本の6550が使われています。合計20本!
 写真では大きさの実感が湧きませんが、
 電源トランスや出力トランスの大きいこと!重い訳です。
 そして底面には強制空冷ファンが4個付いてます。
 
 電源を入れて各部電圧を確認します。
 @増幅段用電源の430V出力が118Vしか出ていない。
 Aバイアス電源-40Vは正常です、先ずは良かった。
 B出力段のSG用335Vも298Vしか出ていない。
 CCH1は、V20/V22/V24のプレート電圧がマイナス?
 でもSG電圧は正常に近い感じ。CH2の出力段は正常でした。
 その他は電源電圧が異常なので、電源を修理してから確認します。

 次に真空管のエミッションを確認します。
 1台あたり32本もあるので大変でした‥。
 幾つかは指定と異なる銘柄が使われていますが問題ないでしょう。
 確認結果は、運良く全ての真空管は規定範囲以内でした。
 でも実動作で問題無いかどうかは、未だ判りません。
 では電源修理を始めましょう。



 電源回路には修理跡がありましたが今回は別部分の故障のようです。
 回路図を睨みながら回路部品を順に点検して見つけました。
 誤差増幅ICと入力保護用ダイオードが不良でした。
 特にダイオードはショートしてて13Ωの抵抗に化けていました。
 更に430V電源の位相補償コンデンサが誤配線されてます。
 そして電源回路の6550用プレート抵抗、スクリーン抵抗が4本とも劣化してました。
 不良部品を交換し誤配線を修正すると電源が生き返りました!
 
 次に出力段6550の番号V20/V22/V24のプレート抵抗が断線してます。
 モールド封入の巻線抵抗なので外観からは判りません。
 同規格の酸化皮膜抵抗を仮付けして動作確認すると正常電圧になりました。
 これでアンプ回路の動作確認を始められます。



   修理その2 

 電源が生き返ったので増幅部の確認修理を始めます。
 各部の電圧を測定しても大幅に狂った箇所は有りません。
 残留雑音は、両チャンネルとも2mV程度になりました。
 ただプレート抵抗が断線した6550のバイアス電圧がフラフラと不安定です。
 どうやらカップリングコンデンサ絶縁低下らしいです。
  バイアス不安定→過電流→抵抗断線といった因果関係ですね。
 CH1の上側4本分のカップリングコンデンサを交換します。
 
 これで、やっとこさ性能測定が始められます。
 最大出力を測ると‥、
  えっ!? 9Wしか出ない。定格250W/chの筈なのに。
 8Ω負荷時に出力波形の上下が同時に8.5Vでクリップします。
 プレートもスクリーン電圧も正常なのに。
 オシロで各部波形を確認すると、6550グリッド入力で既にクリップしてます。
 励振回路の異常でした。
 ところがaudio reserch独特の回路で普通じゃありません。
 3極菅を2個上下に重ね、それを並べてプシュップルにしDC帰還も掛けてます。
 回路図より動作検討します。難解ですね!
 でも出力側から考え直すと理解出来ました。現物で電圧を動かして確認すると
 原因は1段目6DJ8の不良で異常にバイアスが深くなっていました。
 交換して、回路電圧を調整すると出力250W出るようになりました。

 まだ不具合は終わりません!
 高調波歪を測定すると10W出力時に0.25%、
 規格は0.02%なのでACバランスの不具合です。
 CH1/CH2共に結果がNG、規格値以上の歪が出ます。
 原因は、ドライブ段6CG7内蔵2つのユニット間のアンバランスでした。
 在庫品を選別してバランスが良い球を使用します。
 交換の結果、歪率は10W出力時に0.016%に低下しました。
  (出力トランスの不良で無くてよかった‥)
 ただしこの回路の問題も判りました。
 最大出力と最低歪になる調整ポイントが合わないのです。
 今回は出力優先で調整を行いました。
 歪率0.03%と0.015%の差は判りませんから。

 最後に、電源の老朽ケミコンを交換、リレー接点清掃と間隙調整を実施
 ヘタっている底足を新品に交換しました。
 忘れずにヒューズを正規品に交換します。
  @ラインヒューズ   遅延型15A
  Aスクリーンヒューズ 即断型1A

 修理終了です。
   左がCH1アンプ基板、右が電源基板の写真です。



   性能測定 
 


性能測定結果
 G = CH1 32.1dB / CH2 32.0dB
 残留雑音 CH1 1.05mV / CH2 0.97mV (フィルター無し)
 出力インピーダンス CH1 0.41Ω / CH2 0.37Ω (1kHz)
 ダンピングファクタ CH1 19.75 / CH2 21.55 (8Ωに対して)
 最大出力 255W (1kHz THD+N=1%)
 出力帯域 15Hz〜20kHz (100W)
        7Hz〜50kHz (10W)
 THD+N CH1 0.022% / CH2 0.024% (10W出力時)
   試聴
 検聴用システムに組み込み試聴しました。
 驚きました!
 我が家のスピーカーがこんなに鳴ったのは初めてです!
 なんと高低域とも1オクターブぐらい広がりました。
 特に低域は、サブウーファーのように足元から揺さぶられる感じです。
 しかも軽いのです。すっと出てきます。
 念の為、オシロで出力監視するとピークで50W以上出ていました。

 これは麻薬です‥、並みのアンプでは満足できなくなりました。
 ムラムラと新作構想が湧き上がりました!
 

Copyright © 2016 ヤマナカ技研 All rights reserved.
by 無料ホームページ制作講座