ヤマナカ技研 寝屋川の真空管アンプ専門店
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Marantz 10B(6台目)の修理
「FMチューナー Marantz 10Bを修理して復活させて欲しい。」
とメールが入りました。
はい、判りました御任せ下さい。十分に整備して復活させます。
オーナーより宅急便でMarantz10Bが届きました。
大きな謀中古販売店の梱包箱です。
開けるとウッドケースは無くシャーシがむき出しでした。
そしてダイアルガラスパネルが割れています!
印刷は全部消えていますし、ダイアル指針も無い。
こりゃあ、歯応えのある修理になりますね!
気合を入れて十分に整備しましょう。
目視で外観確認すると、
@指針欠損、ダイアルパネルが破損
A検波コイルのカバーが少し変形している。
B表示用ブラウン管は新しいので交換されたらしい
次に底板を開けて内部確認
Cブロックコンデンサは液漏れ、 Dマイナス電源用ケミコンは粉末付着で真っ白(液漏れ?)
E抵抗とコンデンサ類の一部が交換されている
Fフォトカプラーはオリジナル部品が付いている。
Gフロントエンド内部はステーが外れて転がっているし
同調コイルは半田付け跡が異常に多く段間ショートしそうだ。
H表示切替ロータリースイッチはベーク板が接着剤で補修されている。
ジャンク状態ですね!!
電源修理が最初の仕事です。この状態では怖くて電源を入れられません。
その後に、フロントエンド内部の整備、そしてIF回路、MPX回路、AF回路の修理調整。
ミューティング回路、表示用スコープ確認と調整‥
それから、ダイアルに指針を付けなきゃ!
割れたダイアルパネルを探さなきゃ!確かeBayで補修パーツを見かけたように思うけど‥。
これはレストアに近い状況ですね。
では、始めましょう!
修理1 電源修理
ブロックコンデンサを交換するために電源回路部品を取外します。
今回は発熱する抵抗類を全部シャーシ上に移動します。
抵抗取付台兼放熱器を作製して追加します。
これでケミコンだけでなく全ての部品が長寿命になるでしょう。
この部分だけで10W以上も発熱しているのですから、
シャーシ内部の温度上昇を考えると怖くなります!
修理2 ディエンファシス補正
日本では50μSにしなくては駄目です。
US仕様では75μSなので定数変更しないと高域不足です。
コンデンサと抵抗値を指定値に変更します。
修理3 真空管確認
使用真空管のエミッションチェックします。
EC88(6DL4)と6DZ4がエミ減なので交換必要です。
表示ドライバのV20(ECC83)はエアーが入って死んでいました。
修理4 フロントエンド修理
電源修理が終わったので性能確認しながら修理を行います。
電源電圧をスライダックでゆっくり上げていきます。
各部電圧に異常は無さそうです。
一度電源を切って放電させ、真空管を挿入して再度電源ON、どうだ?
出力端子にはホワイトノイズが出てきたので動作はしているようです。
SSGから信号を入れて受信周波数を探すと83MHzが受信出来ました。
でも、とても低感度です。スコープに何も出ないし‥
増幅回路部分の電圧を確認するとフロントエンド回路とスコープ表示ドライブ回路が異常です。
EC88と6DZ4を未交換でした。しかし交換しても感度は上がりません。何でかな?
もう一度、フロントエンド内部を拡大鏡で睨むと判りました!
初段プレート同調回路コイル直付け抵抗が外れてます!電源電圧が掛かってない!
念の為にIF初段にスイープジェネレーターから10.7MHzを入れてIF部の性能確認と調整を実施します。
IF部の動作は正常なので感度不足はフロントエンド部分原因が確定です。
未だ感度が少々悪いのですが実用上は問題無く大丈夫です。
前回の修理時に同調回路を弄りすぎてQが下がってしまっています。
それで正規のゲインが上がらないようです。その証拠に同調調整がとってもブロードです。
コイルを巻きなおしてバリコンとトリマーを新品に換えれば良くなるのは判りますが
そこまで手間隙を掛ける必要はありません。FMチューナーは通信機器ではありませんから
妨害が少なく強度十分な信号を与えて使います。
修理5 ミューティング、セパレーション修理
ステレオ/モノラル切替回路のフォトカプラーが老朽劣化して機能しないので
出力レベルが不安定で雑音も不規則に変動します。
代替部品が無いしやむを得ないのでステレオモード固定に回路変更します。
弊害として弱電波受信時にビート雑音(ジュルジュル音)が出ますが
中強度以上の受信では止まるので問題ありません。
更にステレオセパレーション調整用ボリュームを交換します。
これはMarantz10B共通の弱点です。
次にミューティングも働かずミューティングONでも雑音出っ放しです。
これも原因はフォトカプラー劣化ですから交換します。
交換部品は、オーナーからの支給部品を使いました
修理6 ダイアル修理
eBayで見つけました!復刻版の完全版2枚セットのガラスパネルがありました。
早速、即決で落札して出品者に連絡を取りました。
なんと発送元は台湾でした?少々不安が出ましたが、思い切って送金して入荷を待ちます。
約10日後に国際宅急便で届きました。想像よりもずーっと良い出来です、良かった!
これで欠損しているダイアル指針を作れば完全復活です!
指針の材料はアクリル製の3角棒です。
ナイフで端を削って平坦にして
反対側に蛍光塗料を塗ります。
針板に接着して完了です。
ちょっと大きくてカッコ悪くなりました。
ごめんなさい!
修理6 スコープ修理
オシロスコープ形式のMarantz10B独特の同調表示が故障して何も出ません。
オーディオ出力表示は水平には広がりますが上下が振れません。
上下に振れない原因はドライブ用真空管の劣化でした。ベース部にひびが入って空気が入っていました。
交換して上下に振れるのでオーディオ出力では正常になりました。
同調表示不良はチューナー部の動作は確認済みで正常なので表示回路の問題です。
配線を確認すると切替スイッチ手前で検波出力が断線していました。
接続を正常にして修理完了しました。
調整
一通り修理が終了したので、各部分の調整を行います。
@検波コイルとIF回路
Aフロントエンド、アンテナ入力部
Bステレオマルチプレックス回路
Cミューティングレベル、ステレオランプ点灯レベル
Dオーディオ出力レベル
Eスコープ表示調整
仕上げ
最後にダイアルガラスを指針に注意して取付けます。
そして日本バンド周波数をパネルに貼り付けて完成です!!
測定
沢山の項目で煩雑なので代表的な測定結果をご覧ください。
修理完了
文章では短く書きましたが、夫々の修理は結構手間隙が掛かりました。
今回は電源改造とパネルを入れ替えたので
本当にレストアでした。でも良い音です!
Marantz10Bは、どれも良い音がしますね。
遠い昔のエンジニアの努力が感じられます。
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